はずかしいばくろ

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 落ち着いた音楽が流れる店内。  定食のご飯はおかわり自由で、お茶や水はセルフ。カウンター席とボックス席が主流の店内は、一人でも男二人でも入りやすくて長居しやすい。  向かい合って座り、生姜焼き定食と焼き魚定食を食べながら、俺達は普通に雑談していた。 「休みなのに会社の近くまで来るの、面倒じゃなかったのか?」 「この辺は好きな店も多いから、暇な時はわりと来ますよ。服見たり靴見たり。限定品のスニーカーとかも売ってるし」 「あー、そういえばスニーカー集めてるって言ってたな」 「……見ます?」  水を飲んでいた紫崎。スニーカーの話題出したら目キラキラさせて、真顔でスマホの画像を見せてくれた。  自宅を撮ったらしく、集めたスニーカーは木製の棚に飾ってディスプレイしている。まだ数は少ないけど、店みたいで。 「おー! かっこいいじゃん! モデルとかそんなに詳しくないけど、良いな。これ履いたりとかは……」 「観賞用です、絶対履きません。昔バスケ仲間で履こうとした奴居たけど……出禁にして」 「恐っ」  冗談ぽい事を真顔で喋ったりするから、それが面白くて笑って。紫崎も俺が笑う姿見て微笑んで。  上司とか部下とかそんなの関係無く、こういう風に他愛ない話出来るのも幸せだって。改めて思った。  笑いを落ち着かせると、また違う雰囲気で真顔になっている紫崎が目の前に居た。 「今度、家に見に来ますか?」  すごく嬉しいし、少し前の俺だったら「行きたい」って即答してた。でも、言わなきゃいけない事があったから、それは出来なくて。  箸を一旦置くと、俺は相手を刺激しない穏やかな笑みを作った。 「それは、純粋な誘いって受け取って良いのか?」  後ろめたさみたいなものもあったのか、紫崎は何も言わない。  今がそのタイミングに思えて、さっき考えていた事を実行に移す事にした。 「紫崎、その……言いずらいんだけどさ……」  飲食店だし、こういう話するのもどうかと思ったが、小さめな声で言った。 「俺、飲み会の時は言わなかったけど……夜は激しくないとダメなんだ……」 「…………」  開いた口が塞がらない。その言葉が相応しい表情を紫崎はしていた。目が点になってる。
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