はずかしいばくろ

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 年上の男性上司がこんな事言ったら普通にドン引くと思った。  そう、とてもくだらない作戦だけど、激しいのが好きって性癖を暴露する事にした。とてもじゃないけど、自分からゲイだとは言えないから。  昨日はたまたまやる気になっていただけだろうし、元々淡白な紫崎には無理な話だろうから。相手の戦意を削ぎに掛かる。  とても勿体無い事をしているのは、すごく自覚してる。が、これ以上ディープな世界に浸らせるのも悪い。  この前のED騒動みたいに気分を害さない様、慎重に顔色を伺いながら言葉を並べた。 「この前みたいのじゃ、物足りなくなるんだ。だから俺、紫崎とは相性が悪いと思う。紫崎も、これ以上先の事は出来ないだろうし……」  紫崎は呆然としていたが、目を泳がせてから水を一気に飲み干した。  この後の反応が気になり、俺の心はドキマギしてる。 「む、紫崎?」  グラスを置く音が大きく響いた後、彼はうつ向いたまま口を開いた。 「……わ、わかりました」  その一言で肩の荷が下りて、自然と表情筋が緩んだ。 「わかってもらえて良かった! あ、でもこれからもいろいろと相談に乗るから……何かあったら言ってくれ!」  返事はなかったが、紫崎は食事を再開していた。それ以降は無口になってしまい、会話はない。あまりにも衝撃的な事を伝えたから無理もないけど、会社でもしばらくはこういう状況だろう。  ふっと、寂しさが湧いてきたけど、紫崎の為。そう思いながら心を安定させるべく微笑み、食事を続けた。  食べ終わった後は、俺から軽い別れの言葉を掛けてやり、先に店内を後にした。  家に帰ってからは気持ちを切り換えてスマホを握り、SNSに頼る事にした。  あまり気乗りはしなかったが、今の欲望を断ち切るには違う相手を探すしかない。  ソファに寝転がりながらゲイの相手を探したが、いまいち惹かれない。なので、スマホのアドレス帳から以前に相手をしてもらった人を探し、目星を付けた。  けれど偶然にも、相手の名前の下には紫崎の名前があって。  そのせいで紫崎との事を思い出してしまい、その日はメールを打つ気にはなれず。しばらくはスマホを胸の上に置いて、天井を眺める事になった。
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