はじめてどうし

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 紫崎に連れられてホテルに来た。もう後には引けないのに、シャワーを頭から被りながら未だにどうするべきか考えていた。 (興味があるって言ってたから、本人の意思はしっかりあるだろ……なら、受け入れても良いんだろうけど。こういう場合、こっちがリードするべきだよな。最初から激しくしてもいいものか? いや、最初はゆっくりで……)  紫崎とは触れ合ったが、ノンケとの本番は初めてだ。  だいたいの手順を頭に入れて、シャワーのカランを締めた。頭を小さなタオルで拭いてから、念入りに洗った身体をバスローブで包み、部屋へ戻った。  ベットに腰掛けていた彼は俺の気配に気付いてちらりと視線を上げたけど、微動だにしない。  視線もすぐに逸らされたし、きっと緊張しているんだと思って。同じバスローブ姿の紫崎の隣に静かに腰を下ろして、寄り添った。 「ごめんな、緊張してるよな。いきなりこういう事になって」  気遣いで掛けた言葉だけど、紫崎は少しむすっとして、やっとこちらを見やった。 「謝らないで下さいよ。俺がしたいって言ったんだし」 「んっ、そっか」  どんな気持ちも全部受け取ってやろうとおおらかに居たら、彼は頭を下げて項垂れた。 「……必要以上に緊張してる俺、何か格好わりぃ……」 「大丈夫だって、一般的にそれが普通だから」  自分に対しての苛立ちがあるみたいで、リラックスさせるつもりで背中を撫でてやった。すると、紫崎は顔を上げてぶっきらぼうに言った。 「けど、初めてだからこそ余計ちゃんとしたくなるし、あんたの要求にもちゃんと応えたいから……」  俺の為にこう思ってくれているのはわかる。だから笑みも溢れるけど最後にもう一度だけ、不安を隠しながら確認を取った。 「……俺とするの、本当に嫌じゃないか?」  喋り終えた途端、肩に紫崎の手が掛かり、引き寄せられた。また怒れてしまいそうな、睨み顔を作っている。 「くどい。嫌なら、最初からしてない」 「ははっ、ごめん。そうだよな。少し気になったんだけど……じゃあ……」
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