はじめてどうし

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「んんっ、ぁ、んっ、きもちいっ、気持ち良いよむらさきっ、あ!」  お互い顔は見えないけど、紫崎でちゃんと感じてるって伝えたかった。俺を抱いてくれた初めてのノンケだし、男は俺じゃなきゃ無理って言ってくれたから。  彼がどう思っているかは、わからない。けど、荒い呼吸と激しい腰の打ち付けで、興奮しながら俺を絶頂に導こうとしている。それだけはわかった。 「ぁっ、ぁ、ぁ! んぅー!」  ピストンが小刻みになってきて、俺も頭が真っ白になり始めて。 「イくっ、あっ、ぁあっー!」  何度も何度も奥を刺激された俺は果てて、シーツを汚した。 「くっ……!」  達した時にきつく中を締め付けたら、後ろで紫崎の声が聴こえた。彼も達したみたいで、律動は緩やかに停止する。  久しぶりの激しい行為でクタクタだったけど、疲労感が心地好かった。 「んっ……ぁ」  乱れていた呼吸を整えていたら、彼のモノがゆっくり中から引き抜かれた。少しだけ切なく感じる。  呼吸を整え終わると、怠さのある身体を起こす。男と初めてを経験した紫崎の様子が気になって、振り返った。 「紫崎、大丈……ぅむっ!?」  ガバッと、犬にでも飛び掛かられたみたいだった。しかも、口付けられながら、ベットに組み敷かれて。 「んっ、ぁっ……むらっ、んぅ……」  舌を絡め取られ、情熱的なキスを与えられた俺の力は抜けて いく。抵抗せずにしばらくの甘い時間を堪能したら、紫崎とやっと目が合った。照れを含んだ、色気のある男の顔だった。 「良かったですか……激しいの」  とても満足だったから、最高の気分と感謝を笑顔で伝えた。 「んっ、良かったよ。ありがとう」 「いや……」  照れているみたいに目線を逸らした紫崎は、俺を強く抱き締めて顔を隠した。すると、遠慮がちな声が聴こえた。 「……あの」 「ん?」 「……いや、何でもない」 「そっか」  初めてが終わった後で気恥ずかしさがあるらしい紫崎は、この後も無口だった。  一回してしまってからはどうなるんだと考えたけど、その日にそういう会話はなく。  しばらく動かない紫崎の頭を撫でて、密着するだけの時間を楽しんだ。  その後はそれぞれシャワーを浴びてホテルを出て紫崎と別れ、俺は満たされた気分で一日を終えた。
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