ごらんしん

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 朝礼後に紫崎を心配する作業員達を見送ったら、俺は先に紫崎だけを応接室に行かせた。  リラックスした状態で彼が話せる様に、おぼんに二人分のコーヒーを用意。  それを持って応接室をノックしたら、そわそわして部屋をうろついていた紫崎と目が合う。 「待たせてごめんな。座っていいから」 「あ、すみません……」  肩を落とし、反省している様子の紫崎。革張りのソファに彼が座ったのを確認してから、ローテーブルにおぼんを置いた。  そして俺は、流れる様に床に座って土下座した。 「申し訳ありませんでしたっ!」 「は!?  ちょっ、なにしてんのっ!」  紫崎は慌てて立ち上がって床に跪き、俺の肩を掴んだ。強い力で、俺の頭は上を向く。 「なんで係長が土下座すんの!? 悪いのは仕事に集中出来なかった俺だろっ」 「だって俺、した後の紫崎の精神状態まで考えてなかったから……」 「精神状態?」  俺は肩を落としてしょぼくれて、怪訝な顔する紫崎に土下座の理由を話した。 「俺はその、経験あるけど……紫崎は初めてだから、後から精神的負担が来てもおかしくなかったのに、俺そこまで考慮してなくて。仕事に集中出来なかったのもそのせいだろ? 嫌だったよな……」 「嫌じゃないっ」 「え?」  重い罪悪感で押し潰されそうな俺の耳に、怒った否定の言葉がよく届いた。  わりと大きな声を出した事にはっとした様子の紫崎は、耳を真っ赤にし出して。 「嫌だったんじゃなくて、良かったから……消化不良で……」 「……消化不良?」  俺はきょとんとしながらも、ぼそぼそと恥ずかしそうに喋る彼の言葉を一生懸命耳で拾った。 「実はあの時、良かったから、もう一回……いや、何回もしようと思ったんだけど……この前の飲み会で、係長体力ないって話してたの思い出して、やめた」  一昨日のことを思い返せば、俺が果てた後、紫崎は俺を押し倒して激しくキスをした。 (あれ、第二ラウンドの合図だったのか! 惜しいことした!)  表面上は驚き、心の中では気付けなかった事を悔やんだ。対称的に、紫崎は髪を掻き上げながら情けないと言いたげな表情をしている。
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