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「でも、やめるって自分で決めたのに……後になってからモヤモヤして。今までこんなのなかったから訳わからなくて……」
「それは……」
爽やかに言うべき言葉でもない。けど、彼の反応がとても嬉しかったから、同じ感情を持っていた同志として教えた。
「欲求不満だ」
目を丸くした紫崎の両肩を叩き、俺は彼の感情に感謝の気持ちを表した。
「紫崎が俺を抱いたから嫌な気分にしたって思い込んでたけど……そういう風に思ってくれたならすごく嬉しいよ」
同時に、後ろめたさで視線を逸らしながら言いずらかった事実も告げた。
「実は、飲み会で言った事は、ほとんど嘘なんだ。俺、中身いろいろとやばいから……隠した方がいいと思って。酒入ると、そういう事喋っちゃいそうだったから酔わない様にしてたし。本当は何回でも、毎日でもしたいくらいだから……紫崎の要求にはいくらでも応えられる」
怖かったけど反応を知りたくて、無意識に上目遣いするみたいに紫崎を見た。彼はあからさまにそっぽ向いたけど。
「じゃあ……その時は、お願いします」
「……こちらこそ」
照れている彼に微笑むと、俺は立ち上がった。スラックスの脛部分を払いながら、話題を元に戻す。
「ところで、理由はわかったけど……みんな心配してたから、ゆっくり調子戻す様にな」
「はい……」
痛いところを突かれた。そんな風にしながら紫崎も立ち上がった。
理由も理由だったから少し怒りずらくて、茶化すみたいに紫崎の頬を指で突いた。
「今度したら、お仕置きだぞ?」
「は?」
蔑むみたいな目で睨まれた。
俺は思わず笑ってしまったけど、紫崎が俺の頬に触れたから笑いはすぐに引っ込んだ。
強く見つめられて、一昨日の熱くて甘い夜を思い出した俺に、紫崎は宣戦布告した。
「飲み会での話が全部嘘って聞いて、これまでの反応とか、合点がいった。さっき今度って言ったけど……悔しいから、隠してるやつ今日全部暴いて、俺があんたに仕置きするから。覚悟しておいて下さい」
「っぅー!」
血が沸騰したみたいに身体が熱くなって、それらを強く望んでいるから下腹部も疼く。
上司って立場も忘れていた。
「はい……」
今自分では見えないけど、物欲しそうな、はしたない顔をしているに違いない。紫崎に目を奪われながら、そう思っていた。
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