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紫崎はそんなに興味ないみたいで、食べるか飲むに集中してる。
(個人的に紫崎の好みはすごい興味があるんだけどな……)
「皐月係長の好みはっ!」
「えっ……」
横目で紫崎を観察しながら飲んでいた俺に、メンバーの五人全員が注目し出した。
紫崎を観察していた事を悟らせない様、視線を素早く逸らす。
「俺の好み?」
「ほら、胸とか体型とか! 係長のそういう話聞いた事ないから興味あるんすけど。モテそうなのに結婚してないし、好みとかうるさいんすか?」
テンション高い部下はグイグイ来る。
普段から上司と部下の境目を曖昧にしてるからか、こういう質問はよくされる上に慣れていた。
他の部下達は酔いながらもそいつを嗜めていたけど、気になっている感は漂っている。
可愛い部下達ともっと仲良くなる為だと、俺はにっこり笑って見せた。
「よし、こういう席でしか出来ない話だし、教えちゃおうかなぁ」
紫崎以外から「おー」っと軽い歓声が上がった。
そしたら一人の部下が司会進行みたいなノリで、持っていないマイクを俺に向ける仕草をした。
「それでは皐月係長、好みの胸の大きさは?」
周囲に気を遣い、少し小声で喋る事にした。
「んー、そんなにこだわりないかなぁ。どのくらいでも可愛いと思う」
(嘘。男の硬い雄っぱい大好き。きつく抱き締められた時に顔埋めるのすごく好きだし)
「体型は? 細身かぽっちゃりか。あと身長とか」
「あー、どちらかと言えばぽっちゃり? 抱き締めた時に柔らかいのが良いかな。身長も低い方が惹かれるかも」
(これも嘘。筋肉質な男の人が好きだなぁ。身長も俺より高い方が男を感じられるし、まぁまぁガタイの良い俺が隣に並んでも大丈夫なくらいが嬉しい)
俺が嘘をついているとも思っていない部下達は興味津々そうで。紫崎もコップを持ちながら「へぇ」ってクールに相槌を打っていた。
部下は俺が何でも答えるから気を良くしたらしく、更にニヤニヤし出して。
「じゃあ、付き合ってたら夜の頻度ってどうなんすか?」
これには思わず目をぱちくりさせた。
「おい。そこまでは聞き過ぎだろ」
酔っているとは云え、ふざけ過ぎだと思ったのかもしれない。俺を立ててくれようとした紫崎の気持ちは嬉しく、彼の肩を叩いて笑顔で宥めた。
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