148人が本棚に入れています
本棚に追加
/173ページ
俺がそんな風になっているとは知らない紫崎は、力の抜けた顔でこちらを向いた。
「すみません、巻き込んだみたいで……腰痛めたから早く帰りたいだろうに」
「いっ、い、いや……だっ、大丈夫……」
俺の言動は、ついさっき故障した。どう見ても挙動不審だろう。
「……大丈夫には見えないけど。家まで送る?」
「けっ、結構です!」
紫崎は俺を心配して腕に触れようとしてくれた。なのに俺は、彼の胸板を反射的に押して拒否していた。
目を丸くした紫崎から後退って距離を取り、俺は焦りながら手をバタバタさせた。
「あっ、えっと、本当に問題ないんだっ! 寝れば大丈夫だからっ! じゃ、じゃあまた明日なっ!」
高速でバイバイして、腰の痛みを忘れるくらいに猛ダッシュしていた。
(短かったな、最推しとのセフレ期間)
部下の成長を喜びたいのに、モヤモヤした複雑な気持ちばかりが浮上してくる。
独占欲なんか持つべきじゃない相手なのはわかっているのに。
その日の夜は気持ちの整理が出来ず、俺はしばらく悶え苦しんだ。
最初のコメントを投稿しよう!