よそうがい

8/8

148人が本棚に入れています
本棚に追加
/173ページ
 俺がそんな風になっているとは知らない紫崎は、力の抜けた顔でこちらを向いた。 「すみません、巻き込んだみたいで……腰痛めたから早く帰りたいだろうに」 「いっ、い、いや……だっ、大丈夫……」  俺の言動は、ついさっき故障した。どう見ても挙動不審だろう。 「……大丈夫には見えないけど。家まで送る?」 「けっ、結構です!」  紫崎は俺を心配して腕に触れようとしてくれた。なのに俺は、彼の胸板を反射的に押して拒否していた。  目を丸くした紫崎から後退って距離を取り、俺は焦りながら手をバタバタさせた。 「あっ、えっと、本当に問題ないんだっ! 寝れば大丈夫だからっ! じゃ、じゃあまた明日なっ!」  高速でバイバイして、腰の痛みを忘れるくらいに猛ダッシュしていた。 (短かったな、最推しとのセフレ期間)  部下の成長を喜びたいのに、モヤモヤした複雑な気持ちばかりが浮上してくる。  独占欲なんか持つべきじゃない相手なのはわかっているのに。  その日の夜は気持ちの整理が出来ず、俺はしばらく悶え苦しんだ。
/173ページ

最初のコメントを投稿しよう!

148人が本棚に入れています
本棚に追加