ゆれるきもち

2/9

147人が本棚に入れています
本棚に追加
/173ページ
 いよいよ、休日前夜当日。  夕方、マンションに帰ってきた俺は、部屋の最終チェックに取り掛かっていた。  風呂掃除しながらシャワーを浴びて、新しいお湯を浴槽に溜めて私服に着替え。  ベットのシーツ等を新しい物に交換し、至る所に消臭スプレーを掛けて回った。  元彼が居た時に買った、見せられない大人の玩具達は既に処分済み。それ以上のやばい物はもうこの部屋にはない。  ちゃんと掃除もしたから、準備は完璧な筈だ。  紫崎が来てからの段取りもちゃんと頭に入っている。だからもてなしは完璧だと思うが、俺はずっと落ち着きがなかった。 (本当に俺の部屋に来るんだよな、紫崎。しかも朝まで二人っきりってなると、やっぱり……)  顔を赤らめ、下腹部を摩りながら甘く激しい夜を想像した。  会社では如何わしいことを頭からシャットアウトし、今日は紫崎との接触も極力避けた。  用心に用心を重ねないと、家に来たがっている紫崎にも迷惑が掛かるからだ。  家にまで入れるとなると、関係性はかなりズブズブ。接触が多ければ多い程、周囲からも怪しまれやすくなってくる。  一昨日のことで関係性の終わりが見えてきていたけど、今はもう見えなくなっている。それもそれで、突然に終わりが来たら立ち直れなくなりそうだから怖い。  昨日は関係を続けられると喜んでいたけど、本当にこれで良いのかって。迷いのドツボにも嵌まりそうだった。  そんな中、来客を報せるチャイムが鳴る。 「来たっ」  慌てて消臭スプレーを戸棚に仕舞い、足早にインターホンの応答ボタンを押した。 「はいっ!」  力んだ俺の返事の後に、冷静な声が返ってきた。 『紫崎です……』 「あっ、今開けるからっ! ちょっと待っててくれっ!」  床と擦り合うスリッパの音を響かせながら玄関に向かい、来客用のスリッパを揃えて出した。それで気持ちを整える時間を少し作ってから鍵を開け、玄関の扉を開いてやった。  目の前には、仕事終わりでもキリッとしている紫崎の姿があった。
/173ページ

最初のコメントを投稿しよう!

147人が本棚に入れています
本棚に追加