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いよいよ、休日前夜当日。
夕方、マンションに帰ってきた俺は、部屋の最終チェックに取り掛かっていた。
風呂掃除しながらシャワーを浴びて、新しいお湯を浴槽に溜めて私服に着替え。
ベットのシーツ等を新しい物に交換し、至る所に消臭スプレーを掛けて回った。
元彼が居た時に買った、見せられない大人の玩具達は既に処分済み。それ以上のやばい物はもうこの部屋にはない。
ちゃんと掃除もしたから、準備は完璧な筈だ。
紫崎が来てからの段取りもちゃんと頭に入っている。だからもてなしは完璧だと思うが、俺はずっと落ち着きがなかった。
(本当に俺の部屋に来るんだよな、紫崎。しかも朝まで二人っきりってなると、やっぱり……)
顔を赤らめ、下腹部を摩りながら甘く激しい夜を想像した。
会社では如何わしいことを頭からシャットアウトし、今日は紫崎との接触も極力避けた。
用心に用心を重ねないと、家に来たがっている紫崎にも迷惑が掛かるからだ。
家にまで入れるとなると、関係性はかなりズブズブ。接触が多ければ多い程、周囲からも怪しまれやすくなってくる。
一昨日のことで関係性の終わりが見えてきていたけど、今はもう見えなくなっている。それもそれで、突然に終わりが来たら立ち直れなくなりそうだから怖い。
昨日は関係を続けられると喜んでいたけど、本当にこれで良いのかって。迷いのドツボにも嵌まりそうだった。
そんな中、来客を報せるチャイムが鳴る。
「来たっ」
慌てて消臭スプレーを戸棚に仕舞い、足早にインターホンの応答ボタンを押した。
「はいっ!」
力んだ俺の返事の後に、冷静な声が返ってきた。
『紫崎です……』
「あっ、今開けるからっ! ちょっと待っててくれっ!」
床と擦り合うスリッパの音を響かせながら玄関に向かい、来客用のスリッパを揃えて出した。それで気持ちを整える時間を少し作ってから鍵を開け、玄関の扉を開いてやった。
目の前には、仕事終わりでもキリッとしている紫崎の姿があった。
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