ゆれるきもち

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 上がってきた紫崎も普段とは違う、スウェット姿の自然体で。  会社でもホテルでもない場所で見る彼はとても新鮮だった。  紫崎も、俺の部屋に対して同じ様に感じたみたいで。タオルで髪の毛を拭きながら興味深げに見回していた。 「こういう部屋住んでんだ……大人っぽ……」 「別にそんなことないぞ。自分じゃ何も特徴ないと思ってるし。けど、何をどうしたらいいかはわからないから、手の施しようないっていうか……」  1LDKで、一通り必要な物は揃えたけど、こだわったのはでかくて丈夫なベットくらい。  キッチンにはカウンターテーブルみたいなのが付いてて、朝ご飯はそこで。  リビングの中心にはテーブルがあって、その後ろにソファ、前にはテレビ。夕食は床に胡座かいてそこでテレビ見ながら。  典型的な男の一人暮らしで、オシャレさはないと思っていた。  それでも紫崎は気に入ってくれた様子で。 「初めて来たけど、居心地良いから。物あり過ぎなくて窮屈じゃないし。……スニーカー増えたら避難場所に出来そうで良い」 「こら、倉庫じゃないんだから」  冗談言いながら、床に隣合って座った。  それから、彼が用意してくれた酒の缶を軽くぶつけ合って乾杯。テレビを見ながら惣菜を摘まんで、雑談を楽しんだ。 「こういう収納グッズ、会社にも欲しいな。作業員が使う備品とか入れておくのに」 「時間経たない内にすぐグチャグチャになると思う。係長含め、事務の人達は机の上も超綺麗だけど、作業員は荒っぽいの多いから……」 「あー、肉体派多いしなぁ」  作業員達のロッカーの中を思い出し、苦笑して缶酎ハイを傾ける。  すると、紫崎は「肉体派」という言葉を聞いた途端、ふいに自分の腕や身体を確認し出した。そして、俺に視線を移して。 「係長、筋肉質な人が好きって言ってましたよね?」 「えっ! あっ……」  本当の好みのタイプを話した時は酔っていたけど、うっすらと覚えていた。  その時は情事中で、思い出して恥ずかしくなったが、素直に認める。
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