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流されまいと抱かれることを拒んでいたけど、あのまま抱かれていた方が良かったかも。なんて、時間が経った後に思い始めていた。
あらゆるものを曝け出して、こちらの方が何十倍も恥ずかしいって、感じ出していた。
あれから彼の胸元に顔を埋めながら、ベットに横になっている。
紫崎は何もしてこない。ただ俺を抱き締めて、寄り添ってくれていた。
それが少し申し訳なくて、泣き腫らした目で軽く彼を見上げた。
「紫崎、あの……ごめん。せっかく泊まりに来てくれたのに、なんか変なことになっちゃったな」
彼は微笑んで見える穏やかな表情で、俺の頭を撫でた。
「別にいいですよ……皐月さんのこと知れたから、それはそれで嬉しかったし」
紫崎は優しくて、この状況についても気にしていない様子だ。
けど、彼の欲求を俺が退けたから、紫崎の昂りや気持ちは中途半端な筈。だから、俺のせいで紫崎がまた消化不良を起こすんじゃないかって気持ちもあった。
(暴れてあんな断り方したし、今日の俺は抱かれる資格ないけど……紫崎には我慢させてばかりだ。最初の時みたいに、俺が紫崎にしてあげるだけなら、気持ちに応えることにはなるかな……)
さっきの事態で、紫崎に対する俺の気持ちは変わりつつあった。言い出していいものかは、まだ迷っているし、虫がよすぎる気もしている。
気持ちについて言葉には出しずらいけど、昂りだけは治めてあげたいと思った。
だから、何も言わずに紫崎のモノに手を伸ばして、そこを震える手で撫でた。
「っ! 皐月さっ」
身体をびくびくさせた紫崎の顔は見ないで、刺激する様に撫でながらおずおずと申し出た。
「あのっ、さっき俺は嫌がったから俺が抱かれたいとかじゃなくて……嫌がって中途半端にさせたから……お、お詫びに、紫崎だけ好くしてあげたいっ。紫崎はおとなしくしてるだけで、いいからっ……」
「それっ、無理っ」
「ぁっ……」
荒く呼吸した紫崎に、手首を掴まれた。
さっきのこともあったから、拒否されてもおかしくはない。嫌われても、胸の奥がざわついても、表に出さない様に平常心を保とうとした。
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