80人が本棚に入れています
本棚に追加
これまでの記憶があってもなくても、皆それぞれ今までとは違う道を歩んでいる。そしてそれは、リヴェラとギルバートも同じことで。
「リラ、そんなにニヤニヤしてどうした?」
「んー、明日の結婚式が楽しみだなと思っただけよ」
明日が必ず来ることを、疑いもしないで済む世界。どんどん先へと流れる時間。そんな当たり前の毎日が、何年経っても愛おしい。
「じゃあ私は先に戻るわね。フレデリカ様を待たせるわけにはいかないし」
「ああ。そうだ、今日こそは一緒に夕食をとろう。約束だ」
「……昨日のことを気にしてるなら大丈夫よ? あなたが忙しいのはわかっているし、アビゲイル様がいるから寂しいとかもないし」
「俺がお前と一緒に過ごしたいんだ。くっ……父上め。自分がリラと一緒に過ごせないからって俺を巻き添えにするとは。絶対に許さない」
剣呑な目をするギルバートにリヴェラが呆れた顔をした。
普段から朝食と夕食はできるだけ一緒にとるようにしている二人だが、昨日はギルバートが国王の公務に付き合わされて戻るのが遅くなってしまい、ようやく寝室に戻れた頃にはすでにリヴェラは夢の中だった。妻の寝顔が見られるのは幸せだが、それとこれとは話が別である。
「今日はできるだけ早く戻る。お前も明日は早いんだ。無理しないようにな」
「そうね。もう私一人の体じゃないものね」
分かっているならいいとギルバートは頷いた。そういえば、彼女はあまり無理をしなくなったなと思う。それに以前よりもずっと笑顔が増えた。これからもそうであって欲しいし、そんな彼女のそばにずっといたいと心の底から願うギルバートだ。
最初のコメントを投稿しよう!