01. そして彼女は回帰する

1/4
72人が本棚に入れています
本棚に追加
/125ページ

01. そして彼女は回帰する

 母国クーデルカの王都で、大規模な反乱が起きたらしい。  とある伝手からそんな知らせを受け取った侯爵令嬢のリヴェラは、その日のうちに留学先である隣国から急遽母国へと帰還していた。しかし時すでに遅く、王宮が炎に包まれていく様を少し離れた丘の上から見下ろすハメになっている。  深夜だと言うのに、燃え盛る炎のせいで眼下はひどく明るかった。おかげで美しいと評判のこの丘からの星空も、今日は霞んでいてあまり綺麗には見えない。  焼け落ちていく王宮を眺めていたリヴェラの瞳に呆れの色が強く滲んだ。まったく、少し目を離しただけですぐこれだ。 「今世でもやらかしてくれたわね……」  溜め息をついて、リヴェラは投げやりな気分で地面に仰向けに寝転がった。今夜のしょぼい星空も、このお粗末な結末には相応しい光景のように思えてくる。  いつから燃えているのかは知らないが、王宮を包む火の勢いは今しばらく衰えそうにない。あれほど勢いよく燃え盛っているところを見るに、想定以上に火の回りが早かったのだろうと思う。  つまり、往生際悪くあそこに留まっていた人間は、全員逃げ遅れたと見ていいだろう。そして逃げ遅れた者の中には、リヴェラの妹で王太子妃でもあるリリスも含まれているはずだった。  だが、今さらそれを嘆くほどの純粋さも愛着も、リヴェラは持ち合わせてはいないのだった。  なにしろ妹の死はすでに十回以上経験済みで、もはや「またか」という感想しか出てこない。  そういえば、妹が死に戻りの能力を持っていることに気がついたのは、一体いつ頃だっただろう。確か二度目の回帰が終わる頃だったような気がする。  そんなことを考えながら地面に仰向けに寝転がっていると、耳によく馴染んだ青年の声が「リヴェラ」と名前を呼んできた。声だけで誰か分かったが、一応リヴェラは目を開けた。 「おい、しっかりしろ。大丈夫か」 「……ごきげんよう、ギルバート。こんな凄惨な夜にこんな場所で会うなんて奇遇だわね」  王太子ギルバート。今世ではリリスと結婚していたので、リヴェラから見れば義弟にあたる存在だ。  しかし、繰り返される回帰の中で二人の関係性は二転三転していたため、表向きの関係とは釣り合わない程度にはお互いのことをよく知る間柄でもあった。ちなみに隣国にいたリヴェラに反乱の知らせを送って寄越してきたのも、他でもないギルバートだったりする。
/125ページ

最初のコメントを投稿しよう!