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サークルのメンバーと、肝試しに行った。
メンバーは、康夫と健司、彩、美玖と僕の5人である。
夜中の2時。
場所は町はずれにある廃病院だ。
中をひと通り見て回った後、康夫が言った。
「なんでえ、何にも出ないじゃねえか。やっぱ、幽霊なんていねーんだよ」
「いやあ、それでも十分怖かったって。彩なんか涙目になってたぜ」
健司がにやにや笑って言う。
「だって蜘蛛の巣とかマジきもいんだもん」
ふくれっつらをする彩の肩に手を置いて、クール眼鏡女子の美玖がうなずいた。
「同感だね。まあ、今回もスカってことで。もう帰りましょ」
問題が起こったのは、康夫の車まで戻った時である。
「あれ? 康夫のアルトって、5人乗れたっけ?」
素っ頓狂な声で、健司が言った。
「わけねーだろ。これ、見ての通り、軽だし」
キーで電子ロックを解除しながら、康夫がムッとする。
「え? じゃ、ひとり多いぞ。全員乗れないじゃん」
健司のひと言に、全員の視線が僕に集まった。
みるみるうちに、4人の顔から血の気が引いていく。
やがて、僕の顔を覗き込み、康夫がおずおずとたずねてきた。
「あの…ところで、君、いったい誰?」
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