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最後の夏季集中講座を終えた圭祐は、退室時間ぎりぎりまで自習室に残り、駅へ向かった。
駅に着くと、家から持ってきた菓子パンを齧りながら、参考書を見て時間を潰す。
八時半の終電が来る時刻になり、駅員に「乗らないの?」と聞かれたので、「今日は父が迎えに来るんで、このまま待たせてください」と断った。
駅員は肯いて窓口のシャッターを閉め、灯りを待合室だけ残して消すと、「最後、電気だけ消して帰ってね」と言って帰って行った。
どのくらい待っただろう。あの黒い電車が静かにホームに入ってきた。
同時に駅前広場の方から、がやがやと賑やかな声が近づいてきた。
駅の外に目を凝らすと、異形の者達がまるで百鬼夜行のように駅に向かって歩いてきていた。
昔出会って手を引いてやった、のっぺらぼうの男の子もいる。
ふと別の気配に気づき、ベンチの方を見る。死んだ本庄が座っていた。
「本庄!」
圭祐が声をかける。
ーーどこにいったらいいかわからないんだーー
か細い声が響いてきた。
異形の者達は次々と駅舎に入り、圭祐や本庄を見ずにそのまま改札を通り抜けてホームへと出て行った。
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