5. 失踪

1/1
前へ
/18ページ
次へ

5. 失踪

「俺が高校三年の時の話だ。会長が御法川、副会長が俺、それに書記の女子と、中学からの三人組で夏守高の生徒会をやっていた」 「御法川は頭もいいし、女子にもてる男だったが、夏休みに入ると髪を緑色に染めてきたり、ちょっと変わった奴だった」  野田は懐かしそうに話す。 「御法川の家は代々医者で医大志望だったが、本人にはほかにやりたいことがあったんだ」  しかし周囲の期待に、それを言い出せなかった。 「生徒会引退後、三人組の関係もそれまでのようにはいかなくなった」  三人の関係がどうなってしまったのか気になったが、野田はそれ以上詳しく話さなかった。 「夏休みの後半、御法川が突然姿を消した。前の晩に父親と進路のことでもめたらしい。家出だと大騒ぎになった」  家族も友人も、教師も探したし、警察にも届を出したが、御法川は見つからなかった。 「夏休みも終わり頃、遅くまで学校に残っていた俺は、終電に乗るためここに来た」  しかし終電は僅差で行ってしまって、親に電話して迎えに来てもらうことにした。  駅員も帰った暗い駅舎で親の迎えを待っていると、来ないはずの電車がホームに入ってきた。 「柿崎が見たのと同じ黒い電車だ。どこに隠れていたのか、見たこともない異形の者たちが次々電車に乗り込んだ。そして……」  最後に、緑の髪の男、御法川が現れ、野田の前に立ったという。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

56人が本棚に入れています
本棚に追加