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5. 失踪
「俺が高校三年の時の話だ。会長が御法川、副会長が俺、それに書記の女子と、中学からの三人組で夏守高の生徒会をやっていた」
「御法川は頭もいいし、女子にもてる男だったが、夏休みに入ると髪を緑色に染めてきたり、ちょっと変わった奴だった」
野田は懐かしそうに話す。
「御法川の家は代々医者で医大志望だったが、本人にはほかにやりたいことがあったんだ」
しかし周囲の期待に、それを言い出せなかった。
「生徒会引退後、三人組の関係もそれまでのようにはいかなくなった」
三人の関係がどうなってしまったのか気になったが、野田はそれ以上詳しく話さなかった。
「夏休みの後半、御法川が突然姿を消した。前の晩に父親と進路のことでもめたらしい。家出だと大騒ぎになった」
家族も友人も、教師も探したし、警察にも届を出したが、御法川は見つからなかった。
「夏休みも終わり頃、遅くまで学校に残っていた俺は、終電に乗るためここに来た」
しかし終電は僅差で行ってしまって、親に電話して迎えに来てもらうことにした。
駅員も帰った暗い駅舎で親の迎えを待っていると、来ないはずの電車がホームに入ってきた。
「柿崎が見たのと同じ黒い電車だ。どこに隠れていたのか、見たこともない異形の者たちが次々電車に乗り込んだ。そして……」
最後に、緑の髪の男、御法川が現れ、野田の前に立ったという。
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