56人が本棚に入れています
本棚に追加
3. 本庄
圭祐は集中講座のあと、自習室で夕方まで勉強していた。同じように何人か、そのまま残っている同級生がいた。
廊下を歩く足音がして、ガラガラと自習室の扉が開き、日直の教師が顔を出す。
「おい、まだいたのか。電車組は急げ!」
「あ、やべっ!」
窓の外の夕焼けを見て、圭祐は慌てて立ち上がる。同じように電車通学の生徒が一緒に立ち上がった。
時計を見ると、七時台の電車に間に合うかどうかだった。
圭祐が使う鉄道は東北本線の駅から東に向かう単線で、朝夕は一時間に一本、昼間は二時間に一本という運行本数しかなかった。
七時半の電車を逃せば、次は終電で八時半。それを逃してしまうと、親に車で迎えを頼むしかない。
八時半まで待つのは嫌なので、なんとか七時半に間に合えと慌ててバッグに参考書を詰めて、自習室を飛び出した。
駅と高校の間は自転車を使う。校門そばの駐輪場で自転車にまたがり走り出そうとすると、ふと後ろで気配を感じた。
振り返ると、去年、夏休みの部活帰りに交通事故で亡くなった隣のクラスの本庄が立っていた。
本庄は町内に家があり自転車通学だったのだが、よそ見運転のトラックに轢かれてしまった。
最初のコメントを投稿しよう!