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「疲れてるな。まだ入試本番までは長い。頑張りすぎるなよ」
野田が言う。
「はい。先生は? 普段は車ですよね?」
「修理に出しててな。代車でも良かったんだが、たまには電車も懐かしくていいかなと思ってね」
野田は夏守高校のOBで、圭祐たちの学年より20期上の先輩でもあった。
「先生」
「なんだ?」
「今日の講座で話してた夏の終わりの電車のことですが」
圭祐の話に、野田は圭祐の向かいの椅子に座る。
「僕も子供の頃見たかもしれません。黒い電車でした」
「そうか」
しばらく間が開き、「同じかもしれないな」と答えた。
「変な妖怪みたいなのがいっぱい乗ってました」
「同じだ」
「あと、緑の髪の車掌さんみたいな人もいました」
「えっ?」
野田の顔色が変わった。
「詳しく話してくれないか」
圭祐は小一の夏の終わりの話をした。
「その男は俺の親友かもしれん。御法川誠吾という」
小一の圭祐に名札は全部読めなかったが、三文字の名字で最後が川だった。
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