清華学園の姫たち

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「この子大丈夫なんですか?」 「そうですね。鉄剤内服してもらってるんだけど。それでも中々蓄積されない体質みたいでね。」 先生の顔色が曇る。 「可愛そうだけど、あんまりこう長く続くようだと血を採取するわけにもいかないから。」 その先の言葉は言わないでも判った。 一般人ではここの学園費用は到底払えない。 すなわち退学を意味する。 「先生。契約書ありますか?この先3年間この子の代わりに私の血を採取してください。私は健康体ですし200取ったところで平気です。」 何故縁もゆかりもない、初めて出合った子にこんな気持ちを抱くのだろうか凪は自分から出た言葉に少し戸惑いながらも続けた。 「私の血もこの子と同じランク問題ありますか?」 「確かに彼女と九条さんの血液は同じだから問題はないはずですが、彼女がなんというか。」 「断るでしょうね?ですからこの子が目を覚ます前に契約をさせていただきたいのです。」 「九条さんが誰かのために必死になる姿は初めてね。とりあえず仮契約書ってことでいいかしら?あと今から100cc頂くけど大丈夫?」 先生は鍵のかかった戸棚から契約書を取り出すと凪に差し出した。 「一通り目を通したらサインをして頂戴。本来こういうのは2人の意志のもと行うんだけど。」 先生はなにやら言いながら採血用の準備に取り掛かる。 凪はサラサラと読み終えると美しい字でサインを書いた。 「この子の名前は何ていうんですか?」 「桐山澄よあなたと同じ学年だけどクラスは隣りの朱雀よけして頭が悪いわけじゃないんだけどね。体調崩しやすいから本領発揮できないのよね。」 凪は自分の名前の隣に桐山澄と書き足した。 「これで契約書は完成ですね。先生が物分りがよくて助かりました。ではお好きなだけ私の血をお取りください。」 凪はクスッと微笑んだ。妖艶で誰もが虜になるその笑みに先生自身も一瞬クラっときてしまいそうになる。 「ではいきますね。」 針が刺されるのを凪はじっとみていた。たかが血だ。 こんなものでこの学園は全てが決まると言っていい。 貴重な血だ。 だからって自分の価値が血で決まるとは思われたくはないのも確かだ。 凪は複雑な感情を抱えていた。 「おしまい3分押さえててくださいね」 先生は血液を大事そうにしまいにいく。 凪はベットで眠る少女に目をやる。 もう大丈夫だよというように。
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