落書き

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というわけで私も妻の父親と酒を飲み交わしながら、世間話やら、娘の将来のことなどを話していた。 やがて夕食の時間になり食事を作っていた妻が、出来上がった料理を運んできた。その時、妻の母親が目を覚まし、料理を運ぶのを手伝おうとした。 「いいのよ母さん」妻が母親を制止して言う。「私が運ぶから、ゆっくりしてて」 「何か悪いね。本当なら私が作るところなのに」 料理を運び終わるとみんなで食卓を囲んだ。年季の入った立派なちゃぶ台だった。 まだ絵を描いて遊んでいた娘も食卓へ連れてくる。色鉛筆と落書き帳、それに何故かセロテープを持っていたのでそれを片付けてから食事を始めた。 「いただきます」 食卓には妻が工夫して作った料理が並んだ。私が言うのも何だが料理の腕前はかなりのものだった。 「あら、美味しいわ、あんた、どこかの料理教室にでも行って習ったのかい?」 と妻の母親が尋ねた。 「何言ってんのよ、全部、母さんが教えてくれたんでしょ」 妻は笑いながらそう答えた。 妻は仲の良い親子だったと言ってたが、本当にそうだった。久しぶりに会えたことがよほど嬉しいに違いなかった。
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