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夜道。 いつもはバスに乗る最寄りから徒歩15分を、ゆっくりと歩くことにした。 家に着いたら力が抜けそうで。 朝発覚したあれは、、仕事に打ち込むには最適な材料で。 仕事が終わった今押し寄せる波に、 周りから見られているという自制心なしで立ち向かえる気力がなかった。 「連絡先 ブロックされたら」 「失恋 立ち直る方法」 「復縁 するには」 「いきなり冷たい 彼の気持ち」 気づけば、稚拙で未練がましいワードたちが検索履歴に並んでいた。 小学校から高校まで優等生をしていた私は、 気づけばこんなに凡庸でくだらない女になったのか。 のめり込んでしまった泥沼は、 彼の気まぐれか、ボタンの掛け違いによって消え去ったようだった。 今となっては彼の所有物の棚に並ばなかったことを喜ぶべきか。 この展開を予想していたわけではないが、既成事実は思ったより少なく。 多少のデータともらったプレゼントを削除すれば、 1年前と何も変わらないひとりぼっちの私がいた。 素晴らしい人だった。 これ以上私と馬が合う人はいないだろう。そう思った。 2人でいると笑っていた。 穴を埋められた。 自分が輝くような気がした。 ただこうなると、今まで気にしてこなかった綻びがたくさんあった気がする。 考えてみれば。 私の友達は彼と付き合うことに反対した。 私をいつも「お前」と呼んでいた。 私が流行病にかかった時、薬やマスクまで指定をされていた。 私が新しい道に進むことを、彼は反対した。 あれは、私のことを好きだったからなのだろうか。 鮮やかだった記憶が、みるみるくすんでいく。 彼はカッコよかったのだろうか。 彼にとって、都合が良かったんじゃないのか。 「待って。」 心の中の私が叫んでいる。 彼との美しいはずの思い出が溢れていく。 気づけば涙で前も見えなくなっていた。
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