【4】舞闘派Sub。

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【4】舞闘派Sub。

麗しのエルフのSub(サブ)・リオくんに詰め寄る横暴なDom(ドム)に、店の警備や黒服も素早く動くが……、――――――――その前イィィィッ!!! ズコンッッ!!! 踊りは舞踏。この世界では舞闘(ぶとう)とも言う。その字が示すとおり、元々は闘いのための舞いである。 巧みなステップで敵を翻弄し、時には味方を鼓舞し、バフデバフはお手のもの!剣戟を躱し、相手の懐に入り込み技を決める。もしくはステップに魔法を纏い、相手にぶつけてジャストヒ――――――ッツッッ!!! そんな舞闘は、長い年月をかけて音楽と融合し、今では娯楽となり、舞闘ではなく舞踏を踊ることで平和であることを表す、一種の平和の象徴にもなった。 だが、その根底にあるのはあくまでも闘いの舞である。 つまりは社会的弱者、非力とされるSub(サブ)の、一種の武器でもある。 そして俺の芸術のような容赦のない蹴りに、横暴なDom(ドム)が哀れにも崩れ落ちる。 そして周囲からは惜しみのない拍手が巻きおこった。 因みにだが……通常Dom(ドム)は、Glare(グレア)Command(コマンド)と呼ばれるものでSub(サブ)を支配しようとする。 俺には並みのDom(ドム)Glare(グレア)は効果ないからいいものの、時にはそれがSub(サブ)を縛り、服従させるのだ。 Dom(ドム)は支配したい欲を持ち、Sub(サブ)は支配されたいと言う欲を持つ。そんな特殊なDom/Sub(ドムサブ)ユニバースのふたつの性は、Play(プレイ)と呼ばれる擬似支配をすることにより、その性が持つ欲求を解消する。 そのPlay(プレイ)に使われるのが、Dom(ドム)の得意スキルであるCommand(コマンド)Glare(グレア)。必殺奥義ではない。必殺奥義は、他にあるから。 たくさんのDom/Sub(ドムサブ)ワードが出てくるとこんがらがるし、頭ごっちゃになるからな。ここではまずCommand(コマンド)Glare(グレア)について、解説していこう! Command(コマンド)とは、Dom(ドム)Sub(サブ)を従わせるための専用のCode(呪文)のようなもの。 Glare(グレア)は威圧、覇気のようなもので、Dom(ドム)から放たれるとSub(サブ)Glare(グレア)ビームを浴びせられ、自動的にHPを削られる状態異常を受けたり、逆に回復したりとラッキー特典を得られることもある。 しかし舞闘は時に、凄まじい反撃でGlare(グレア)すら吹き飛ばすと言われている。 状態異常をかけようとしたDom(ドム)を怯ませ、その隙に、鋭い蹴戟(けりわざ)でぶっ飛ばしたり、華麗なステップで逃げたりできるわけだ。 いや、今時そこまでの舞闘をできるSub(サブ)の踊り子は少ないが……。他の踊り子たちができるのはせいぜい護身術程度か。 しかし俺は舞闘もマスターしているので、これくらいはわけがない。 試しに舞闘の基本をひとつ。これは舞闘派Sub(サブ)の心得でもある。Dom(ドム)Command(コマンド)Glare(グレア)を放とうとする前に、蹴り上げ倒せ、ねこキック。 舞闘派じゃないSub(サブ)は、とりま椅子かそこら辺のモノ投げとけ。 ――――――うちの店では、消防訓練の他にも定期的にそういった護身訓練も行っている。 そう言うわけで舞闘派の俺は蹴りをお見舞いしたわけだが。 つーかこれくらいのDom(ドム)ならば、至近距離でGlare(グレア)を放たれたも俺にとっては敵でもなんでもない。Dom(ドム)にもSub(サブ)にもランクがある。ランクの低いSub(サブ)ならば、むしろ至近距離で食らえば倒れてしまうこともある。 「悪いけど、店のルールに従えないのでしたら、指名はお断りです」 俺がそう告げる中、駆け付けてくれたDom(ドム)のスタッフがリオくんを、Care(ケア)に回してくれる。そして警備たちも俺の周りに集まってきてDom(ドム)の周りを囲う。 ――――――ついでにCare(ケア)とは。 Dom(ドム)の意図せぬGlare(グレア)に当てられたりした際に、Sub(サブ)が体調を崩してしまうことがある。 その際に他のDom(ドム)が間に入り、Care(ケア)を行う。 Care(ケア)を行うDom(ドム)は、Sub(サブ)が心理的不安定になり、身体への不調もきたしてSubDrop(サブドロップ)しないよう褒めたり励ましたりしながら安定させるのだ。 ――――――――SubDrop(サブドロップ)だけは……身体の不調だけではなく、最悪重篤な状態になる危険もあるからな。 Dom(ドム)のスタッフはすぐにSub(サブ)Care(ケア)に入れるよう訓練もしているから、リオくんのことは任せて大丈夫である。 あとは、このマナーのなっていないDom(ドム)へのお仕置きの時間だ! 通常お仕置きとか躾ってのはDom(ドム)からSub(サブ)にすることだ。それもPlay(プレイ)の一貫と見なされるからだ。それをSub(サブ)からDom(ドム)にされるのは、Dom(ドム)にとって屈辱的なこと。しかしこう言う場合はSub(サブ)として、きっちりお仕置きしてやらにゃぁならん。 この店のSub(サブ)の踊り子たちは、SubDrop(サブドロップ)しないよう、無理せずPlay(プレイ)をするためのリストを持っている。 それぞれ可、不可なことなど、リストに纏めており、それを客に同意してもらうことで、安心してPlay(プレイ)ルームでのPlay(プレイ)に臨めるのである。 もしも客がイレギュラーなことをしたいと言ったときは、キャストの意思がまずは一番に確認される。 キャストが無理だと断った時はNGだし、キャストがオーケーしたとしても、店として危険だと判断したらNGになる。もしこの決定に客のDom(ドム)が納得しない場合は、契約不成立。お帰りいただくことになる。 しかしSub(サブ)は社会的弱者。Dom(ドム)か社会的地位保持者、権力者だ。 店のルールに則り、Sub(サブ)にも礼儀を持って接してくれるDom(ドム)もいれば、Sub(サブ)Dom(ドム)に従うものだから何でも言うことを聞くべきだとのたまうトンでもなDom(ドム)もいるのである。 このDom(ドム)もそう言った考えのDom(ドム)らしい。Sub(サブ)として許せん!お仕置きしてやるにゃんにゃんっ!猫猫鮪神拳(ねこねこまぐろしんけん)お見舞いしてやろうかにゃぁ~~っ!?いや、もうぶっ倒れてるから無意味か。あとは警備たちのむっちむち雄っぱいと腕に挟まれながら連行されるだけだ!因みに!今ここ駆け付けた警備の中には!みんな――――――っ!喜べ!ガチムチ受けがいるぞおぉぉぉ――――――――っ! もちろん定期的に旦那(♂)とのイチャイチャレポートを徴収済みである!踊り子のSub(サブ)仲間にも共有済みである! 現在この店の踊り子たちには……ガチムチ受けが流行りつつある!因みに、女子Sub(サブ)エリアにも広めておいた!だから男女Sub(サブ)問わず、みんなガチムチ受けについて研鑽を積んでくれているうぅっ! 腐の木の下ではみんな、ナカーマ!我らナカーマ!腐男子腐女子踊り子同盟、ナメんなよ!? あ、話がそれたが、Dom(ドム)の男はガチムチ警備たちに引きずられていくところだった。 さぁ、みんな!こう言う時に打ってつけのポーズを決めようじゃないか……!! ほら、みんなあ~つまれぇ~。 騒ぎを聞き付けた他の踊り子たちもやって来たので……。 みんな一緒に~~、腕組んで~~、顎を少し上げて~~、連行されていくDom(ドム)男を見下す目!! そして……。 ドヤァ――――――――――――――――――――っ!!! Dom(ドム)の男が悔しげな顔でそのイケメンを歪めるのを……俺たちは見逃さなかった。
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