兄弟コンプレックス

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 あてもなく街を歩く。  辺りは真っ暗になっていた。衝動のまま家を飛び出したので、洋助は制服のままだ。    先ほどの怯えた母の表情を思いだして、小さくため息をつく。怒りに身を任せ怒鳴ってしまったことが恥ずかしかった。   ふと昔を思い出す。幼い頃の洋助は頑張れば母に認めてもらえると信じていた。   感情を表にだすのは当時から苦手だったが,小学生の頃から、がんばれば勉強も運動も人並み以上できた。    母に褒めてもらおうと満点のテスト用紙を見せに行くのだが、今は光星の方が大変だからと言われる。  お兄ちゃんだから我慢してくれるよね。母にそう言われる度にテストの端を握りしめて,自分の番が来るのを待ち望んだ。  結局今日にいたるまで,母が洋助を見る日はなかった。  陰鬱な気持ちであるいていると,大通りからはずれて,中道の方に入っていた。  一瞬,洋助は自分がどこにいるのか,わからなかったが,視界の先にコンビニが見えたので,公園の近くだと悟る。  喉が乾いていたので、コンビニに入ろうと思った。  コンビニの端には4名の男子がたむろしていて,下品に大声をあげ,愉しげに集会をしていた。   見たところ髪を染め制服を着崩した姿は,いかにも軽薄そうな不良のそれだ。  洋助はそんな彼らに眉を潜めたが、何もせず通り過ぎようとした。  しかしその時、足元にある缶に気付かず蹴ってしまった。    ポコン,カラカラカラ~と缶が転がり,一人の男の前で停止した。
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