兄弟コンプレックス

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「ねえ,洋助。来てくれる」  部屋で参考書を解いている時,母が外から呼ぶ声がした。嫌な感情が洋助の胸の中で広がる。何故なら母が洋助の名前を呼ぶ時は,不満があるか頼みごとがあるかの2択しかないからだ。  しぶしぶドアを開けると,困った表情の母が立っていた。 「光星が遅いのよ。迎えに行ってくれない? 」  そう言われて時計を見れば,23時を迎えるところだった。塾が終わるのは22時頃だから,確かにいつもより少し遅い時間だ。  しかし,光星が通う塾は自宅から徒歩10分以内であるし、遅いといっても試験前だとこんなものだった気がする。  だが、母にそう言っても、否定されるだけだろう。  洋助は母が自分のことを、ただ話したい内容を聞くだけの受信機かAIだと思っているのではないか、そう本気で考えていた。  頼み事をするにしては,どこか甘えた表情の母に「いかない」といってドアを閉める。暫らくしてドアノブを何度も回す音がした。 「ちょっと,開けなさい! 母親に対してその態度はどうなの! 」  ガチャガチャと鳴る音が不快で耳を塞ぐ。母はいいところのお嬢さんで容姿も良いから傲慢なきらいがある。だから諦めも悪い。
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