兄弟コンプレックス

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 進路指導室で熱心に資料を読んでいた洋助は,時計の針が19時を指していることに気が付かなかった。  教室にいた先生が「そろそろ帰りなさい」と声をかけた事で,辺りが赤く染まっていることに気が付く。洋助は,机の上で開いていたノートを閉じ、家に帰ることにした。    ドアを開くと,母が食器を洗っている音が聞こえた。 「あら,帰ったの。食事は冷蔵庫よ。」  と声を掛けられる。  洋助は聞こえるか聞こえない声でありがとうと呟いた。その後荷物を部屋に置き、急ぎ足で冷蔵庫を開ける。 「……」  中にあったナスの味噌煮を取り出し,小皿に分けレンジに突っ込む。  白米を炊飯器から取りだし,多めに盛った。とたんに湯気が広がる。  味噌汁の鍋に火をつけるも,温まるまで時間がかかりそうだ。 「ついでに私のも入れて頂戴」 「……わかった」  どうやら食器は洗い終わったらしい。  弟はこの時間は塾でいないので,母が夕食を作る時間はまちまちだ。食事は一人で食べる日と母と一緒の日もある。今日は後者だった。
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