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その時、クラスの前で「良い行動」と言われたことを思い出した。
たいしたことではない。しかし、嬉しかった。自分にもいいところがあるかもしれないと感じたのも事実だ。
今までの洋助は特別な才能があるとか,明るくて人から好かれる人物じゃないと,世間は受け入れてくれないと考えていた。
しかし,今日の事や婦人の言葉を思い出すと,人の良さとはそれだけでは無い気がするのだ。
高校に行って友人と呼べる人が出来たし,気にかけてくれる先生の存在もあった。今まで洋助は母の言葉ばかり信じて,卑下してばかりだった。何をやっても人並みにしかであきず,体格がいいのに運動が苦手なし洋助はいつだって母を失望させてきた。
しかしそんな洋助にだって輝ける場所はあるかもしれないと母に知ってほしかった。
「あのさ,今日学校で担任に表彰されたんだ。」
洋助はよく見られようと,少し誇張したいい方をした。それは自分も弟のように母親から肯定されたい一心からだったのだろう。
だから洋助は言ってしまった後に,母に深く聞かれて失望されたらという不安な気持ちと,絶賛しろとは言わないが,嬉しそうに喜ぶ母の反応を想像して,緊張してしまった。
しかし、かえって来たのは,「そうなのね」の一言だ。
表彰とは何についてなの?と聞いてくれさえしなかった。そのくせ思い出したように「表彰といえば,光星がね,応援でゲイトボール大会に出てね……」と楽しそうに話している。
「もういいっ!」
洋助は家を飛び出した。
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