アルファ

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アルファ

 身を刺すような、張り詰めた冬の朝だった。  窓の外はまだ暗く、ほんの僅かな暁の光がやけに眩しかったのを覚えている。  義理の息子からの連絡で、孫娘の誕生を知った。  名前は既に決めていて、「アルファ」と名付けたという。  夜明けに生まれた初めての子。  娘共々学者で、中々子どもに恵まれない中の出産だった事もあり、喜びもひとしおだろう。  私も浮き立つような気持ちを抑えきれないまま、通話を切った。容態が落ち着いたら、すぐ会いに行くと伝えて。  まさかその後、娘と義理の息子を同時に失う事になるとは、露ほども思わずに。 2032e6fa-fa8a-43d1-95e5-a0bea0e5315d
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