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4.小判の発見
さて、日曜日になり叔父と叔母は従兄弟と共に我が家にやってきた。台所の家具はあらかじめきれいに片付けられていつでも発掘作業にかかれるようになっている。
「いくよ」
叔父がスコップを土の上に突き立てた。ザクッという音が響き、何杯かの土をすくったところでカチンという堅い音に変わった。
「お、何かに当たった」
三人は色めき立った。いよいよ黄金色の小判と対面することが出来る。従兄弟が下に下りて手で周りの土をどかし叔父と二人で壺を抱え上げた。
「何だか軽そうだぞ」
と、叔父は変なことを言った。
「ふたを取ってみよう」
壺の中から出て来たのは封筒一通だけだった。開けてみると、それは第二の暗号だった。
「ええーっ!」
皆がため息ともつかぬ声を上げた。
結局、小判三百枚の行方はわからずじまいだった。
※
八年後。
僕は大学卒業後、地方の会社に就職した。
父はちょうどいいタイミングだと思ったのだろう。
退職金で古びた家を改築することにしたそうだった。新しい家の図面が出来上がってよさそうだなと言うことなり、すぐに工事は始まった。
祖父の部屋のあった場所の地下に古井戸があったらしかった。
そして、そこに小判の入った木箱が見つかった。
慶長小判三百枚。
祖父が天国で、いたずらっぽく笑っているのではないかと思えた。了
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