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─15─
二階へ上がり、部屋割りを決めた。俺たち兄弟は右の部屋。福原さんは四畳半ほどの左の部屋。とりあえず疲れたので今日のところはこのまま解散し、寝ることにした。
「ふうー」
部屋に入り、深いため息をつく。
「とりあえず、布団敷くね」
篤人がそう言いながら、押し入れから布団を取り出す。俺もすぐに立ち上がり手伝う。花柄のシーツか被せられた布団からは、お日様の匂いがした。
二枚並べて敷いた布団に、二人、ごろんと横になる。こんな鬼気迫る状況だというのに、俺は小さい頃を思い出し懐かしさを感じていた。
「こうして二人並んで寝るのって、何年ぶりだ?」
「小さい頃以来だよね。途中からはお互い部屋があったし、二人で寝るってなかったよね」
木目の柄が顔に見えそうな天井を見ながら、村について考えていた。
昔は普通の暮らしをしていた村が、突然、一人の医者により支配され、恐怖に怯えながらの暮らしを余儀なくされた……。映画によくありそうな話だ。
この話の怖い所は、きっかけは村民だということ。病を治してくれた彼を神のようだと崇めたのだ。当時を考えれば無理もない話だが。
俺はまだ、本当の怖さを知らない。だから、逃げ出すなど簡単に口にしているが、実際はどうなのだろうか。
──いや、俺たちは恐怖を目の当たりにした。広場で見たのは紛れもなく事実。村長の一声で、村民はあの高い場所から落ち、死んだ。あの人はどういった理由で神判にかけられたのだろうか。そもそも神判とはなんなんだ? 本当に存在する話なのか?
「なあ、篤人。さっきの話で出てきた神判って言葉知ってたのか?」
「ああ。知ってたよ」
「そういえば、歴史とか詳しいもんな」
「うん、好きだからね。神判についてはそこまで詳しくはないけど、昔は本当にあって、その方法はいろいろあるらしく、俺が覚えているのは水審かな」
「水審?」
「人を縛って水に落とすんだ。それで浮かべば有罪、沈めば無罪」
「はあ? なんだそれ」
「罪を認めれば神判にかけられないけど、認めなかった場合は神判で決めるらしいよ」
「恐ろしいな。じゃ、村長はこの話を知っていて模倣したということか」
「うん、そうかもね。ここでは、水ではなく空……すなわち落ちるかどうかで判断するってところだろうね」
「でも水審だと、死なないだろ? ここでやってることは、死んだら有罪、死ななかったら無罪って……どういうことだ?」
「ちょっと意味不明だよね。でも、恐怖を植え付けるには十分すぎるよ。みんなを集めて目の前でやるんだから。誰も逆らわなくなるよ」
「こうなったら、そんなことをやる村長の生い立ちとか気になるよな」
「気にならないよ。そんなことより、明日、いつここを出るか、どうやって出るかとか決めよう」
「そうだな」
俺の悪い癖だ。すぐに、詮索したくなってしまう。
猶予まで、あと六日だ──。
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