神判

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─4─  車を止め、三十分が経った頃、やっと雨が小降りへと変わった。 「やっと落ち着いてきましたね」 「ずいぶん、長く続いたな」 「どうしますか? さっき言ってた方へ行ってみます?」 「そうだな。ここに車止めて、少し様子見に行ってみるか」  こうして、視界がまだ悪い中、明かりが見えていた場所へと歩いて向かうことにした。そこで、ここがどこなのか教えてくれるかもしれない。  森の中へ入ると、人が一人歩けるくらいの道が続いていた。整備されているわけではなく、踏みつぶし作った道のようだった。 「こんな所に人が住んでるんですかね」 「確かにな。こんなところに村があったなんて知らなかった」  近づくにつれ、木が少なくなり家が見えてきた。 「人が住んでいるようですね」 「兄貴、あそこ見て!」  篤人が指さした方に視線を移す。 「何をやってるんだ?」 「人が集まってなんかやってるみたいだな」  ここに着く頃には、あんなに降っていた雨もすっかりと止んでいた。と言うより、ここは降っていなかったようだ。草木が濡れていない。 「祭りか?」  福原さんが目を細め、まっすぐ先を見つめている。  もう少し近づき、様子を見る。 「おい……あれ見てみろよ」  福原さんが何かを指さしている。 「えっ?」 「あんな高い所に立って何やってんだ……」 「祭り……じゃないよね」  篤人の言う通り、ライトアップもされているし、祭りに見えなくもないが、周りにいる人達の様子を見る限り、とても楽しそうには見えない。 「──違うな」 「しっ……何か話してるぞ」  福原さんが口に人さし指を当てる。  耳を澄ませると、拡声器のようなもので話している声が聞こえてきた。 「これから、村のルールを破ったとして、審判を行います。ここを無事に渡りきる、もしくは落ちても生き残れた場合、無罪とします」 「何を言っているんだ……」 「おい……これ、まずいんじゃないか……」  明らかに、祭りではない。 「あんな高い所から落ちて助かるわけないですよ」  篤人の言う通りだった。  どうみても十メートル近くありそうな建物から建物に、細いハシゴのようなものが橋渡しされていた。建物間はそんなに離れてはいないが、そこをどうやら渡るようだった。渡り切らせるつもりなど到底あるとは思えない。それに、落ちて生き残るなど不可能だ。 「あああああああああ」  予想通り渡きれず、真っ逆さまに落ち、聞いたことのない音が静かな空間に響き渡った。おそらく、人が高い所から地面に叩きつけられた音なのだろう……。 「──おい、まじかよ」  三人、口を半開きのまま、呆然と動けずにいた。 「兄貴、これ見たらまずんじゃないか? ここから離れよう!」 「七瀬、篤人の言う通りだ! 早く逃げよう!」 「おい! お前ら何をやってるんだ!!」  逃げようと立ち上がった時、後ろから男性の大きな声がした。  咄嗟に振り向く。 「逃げろ!」  福原さんの声で、俺と篤人は慌てて走り出した。しかし、すぐ近くにいた体格のいい男性たちに取り押さえられてしまった。 「離せよ!」  必死に抵抗するも、びくともしない。  あの福原さんでさえ、がっちりと取り押さえられていた。 「おい! やめろ! 何するんだ!」
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