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プールの水位は下がっているのに、排水溝近くに屈んでいたあの子がいない。
ぷくぷくと泡立っている
溺れたの?嘘でしょ?
助けなきゃって頭では思ってるのに、溺れている人を目の前にして、行動がフリーズされてしまう。
「ばっかじゃないの!!」
構ってほしくてわざと溺れてる。さっき、あの子の話を無視したから・・・・
ビート板を複数小脇に抱え、泡が出ているところまで泳いでいく。目印に浮かんでいる四枚のビート板は、溺れ疲れただろうあの子のために浮かばせて。
ぷくぷくと息が少し漏れていく
それでも、あたしは潜っていく
あの子は・・・・
*
目を見開いてしまうほど、近くにあの子はいた。まるで、潜って助けに来てくれるのを待ち構えていたように、黒く長い髪は、水の流れで広がっていて、排水溝には絡まってはいなかった。
(え?)
あの子に押されているあたし
排水の勢いは強い。吸い込まれていくあたしの茶髪。あの子は、水中で笑っている。
必死にもがこうとして、あの子の手首を掴む。あたしが、一学期につけた傷跡が、みみず腫のようにくっきり残っていた。
(待って、待ってよ!!)
ぷくぷく、ぷくぷく、ごぼ!!
呼吸が激しく乱れる。あたし、死ぬのかな?あの子に、死ね死ねコールしてた。
あたしが死ぬの?
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