夏雲が浮かぶ頃

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** 「ねぇ、おとうさん。 あの雲、わたがしみたい。ソフトクリームにもみえる。 たべたら、おいしいかな」 「おう、美味しいかもな。いつかお父さんと一緒に食べに行こうか」 「うんっ!」 幼い日の夏の休日、 多分、公園からの帰り道だったと思う。 手を繋いで、もくもくと立ち昇る夏雲を眺めながら話した、(おぼろ)げな記憶――。 ** 黒塗りの車の窓から眺める空には、あの日と同じような入道雲。 「先に一人で食べに行っちゃうなんて、お父さんずるいよ」 私は手の中の写真に、そっと語りかけた。
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