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自分の意思を持つ年齢になってからの私は、母とは反りが合わなくなっていた。
正論を振りかざし、とにかく自分の敷いたレールの上を歩ませたがり、それはもはや支配としか感じられなかった。
できる範囲で従いはするが、私にだって自分の意思がある。
それを伝えようとしても、全く耳を貸そうとしなかった。
「口答えするんじゃないの! あなたは親の言う事をちゃんと聞いて、その通りにしていればいい」
自分の考えを口にすれば、その数倍攻撃されるので、そのうち私は大人しく黙るようになった。
それは大人になってもずっと続いた。
結婚して8年家を離れて生活し、私も立派にとは言わないが、一家の主婦。
同居の時が来て、流石にもう大人として子育てもしている私に、以前のように口煩く意見を押し付けることはないと思っていた。
しかし、全く同じだった。
そんな時、クッションになって、母に意見してくれたのは、いつも父だった。
「こいつだって、一家を構えて8年間、家族4人で生活して来たんだ。自分達のやり方ってものがあるだろう。
何もかも、そんなに押し付けるな」
様々な環境に身を投じ、沢山の人と出会い、多くの経験を積んで来た父は、普段は厳しくても、考え方が柔軟だった。
私を一個人として尊重し、信じてくれているのが、何よりも嬉しかった。
学生の頃、少しの反抗期、疎ましく思うこともあったが、父は私の、一番の理解者だったのだ。
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