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「あの。どうしたんですか?」
「なんか今ウチで女子会とかいうのをやっていてね」遠山が苦笑しながら言った。「千夏さんも綾さんもウチの家内とアフタヌーンティーを楽しんでるよ」
「はあ」それでこちらにやってきたというわけか。気がつくと双子はちんまりと席について待っていた。
「飯食ってねえんじゃねえかと思ってな。連絡させた」
「まあ……食べてはなかったですけど」
「そりゃよかった」
遠山は副島にも席につくよう促した。副島は手伝うと言ったが、遠山はそれをやんわりと断った。早川は器用に丸い形に炒飯を盛り付けていった。
「グリンピースいらないです」
「いらないです」
「バカ。グリンピースがのってねえ炒飯なんてありえねえだろ」
「あります」
「あります」
「黙って食え」
早川にそう言われて譲二も真理衣もスプーンを持ったまま膨れっ面をしていた。
「そういえば橋下は?」副島は気になっていたことを尋ねた。
「なんだか立石と大倉のフォローに入るって出て行ったわ」
取立ては橋下の仕事ではない。それなのに一緒に行動するのには何か理由があるのだろうか。
「そんな顔しないで。グリンピースだって仲間はずれにされたら悲しいだろう?」
遠山は双子にそう言った。
「おいしくないです」
「おいしくないです」
「いいから食えって。納豆と同じ豆だぞ?」早川は双子にそう言った。
いや、正確には違うのではと思ったがそれはそっと黙っておいた。
譲二も真理衣も眉間に皺を寄せたままスプーンで掬って口に入れた。するとすぐに二人とも目を見開いた。
「おいしいです!」
「おいしいです!」
「だろうとも」早川は自慢げに言った。「米と一緒に炊いたヤツだからな。冷凍じゃねえんだ」
「きらいじゃないです」
「きらいじゃないです」
双子は喜んでスプーンを進めた。遠山はそれを微笑ましく眺めていた。
「副島くんもどうぞ」遠山がそう言った。
早川は冷蔵庫の中からビールを取り出して遠山の前に置いた。
「お疲れさん」
「お疲れさま」
そう言って二人は缶を合わせた。そして先ほどまで揉めていたのに、もうにこやかに話し始めていた。
穏やかな休日だった。少し賑やかな声も心地よかった。
昔より笑うようになっただろうか。副島はふとそう感じた。
fin
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