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 タブレットの音で副島は我に返った。  そちらに連絡が来るのは一人、いや正確には二人しかいない。副島は手に持っていた銃を置き、慌ててタブレットのもとに急いだ。 「──こんにちは。どうしましたか?」 『あ! 副島のおにいちゃん!』 『ふれんちとーすと、つくりました!』  やはり大倉家の双子だった。こんな時間に珍しい。 『おひるごはんは食べましたか?』 「いえ。忘れてました」 『だったらいっしょに食べませんか?』 『おいしいです!』真理衣はフレンチトーストをぐいぐい画面に近づけてきた。 「お母さんは?」 『いません』 『いません』  母親は仕事だろうか。それにしてもフレンチトーストはどうやって作ったのだろうか。大倉は確か立石の手伝いで出ているはずだ。 「分かりました。ご相伴に預かりましょう」 『ごしょう?』 『おしょう、さん?』  どうやら難しかったらしい。「すぐに向かいます」と答えてアプリを切った。  手入れをしていた銃を片付ける。そして着替えてすぐに家を出た。  大倉家に着くとどこかで見かけたような車が止まっていた。  一応チャイムを鳴らす。すぐに扉が開いた。 「こんにちはです!」 「副島のおにいちゃん! こんにちは!」  真理衣はなぜかフレンチトーストの皿を持ってやって来た。 「二人で作ったんですか?」 「はい! おてつだいしました」 「いっぱいしました」 「そうですか」  副島は二人に続いて中に入って行った。どうやら人の気配がする。母親が帰ってきたのだろうか。 「あーもうそれは分量より多いよ」 「目分量でやってるンで黙っててもらえます?」  副島は目を瞬かせた。なぜここにこの二人がいるんだ? 「目分量なんてねえ、一番信用ならないよ」 「うまけりゃいいじゃねえか」 「えっと……若頭、と遠山さん?」 「おう! やっと来たか!」  ガスコンロの前でカフェエプロンをつけた早川が鍋を振っていた。その隣では小花柄のエプロンをつけた遠山が立っていた。 「ああ、もう! 焦げてるよ!」 「炒飯なんて少しぐらい焦げてたほうが美味いだろうがッ!」  何故この二人は揉めているのか。 「どうでもいいから皿を用意してくれよ」 「もう用意してるよ」  早川は遠山の返事に舌打ちをした。どうやらきっちりしたい遠山と大雑把な早川とは作業の進め方が合わないらしい。
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