50人が本棚に入れています
本棚に追加
彼からの連絡
一日中あんなに暑かったのが、ここにきて漸く朝晩涼しくなってきた夏の終わりのある金曜日の夜のこと。
食事後、シャワーを浴びて、ぼーっとイスに座ってテレビを観ていると、着信音が鳴った。
テーブルに置いていたスマホを見ると、その着信音は、お互い仕事で忙しかったり、個別で用事があったりですれ違って、なかなか会えていない彼からだった。
「もしもし、カナ?」
『うん』
「今、喋ってかまへん?」
『今?いいで』
「今、どこにいんの?」
『家…どうしたん?なんかあったん?』
「いや?…えっと…あの…うん…今、カナが使う最寄駅にいるねん。あの、急で悪いけど、今からカナの家に行っていい?」
『今から?』
「うん」
『かまへんよ。あっ、でも、夜ごはん用意出来ひんけど』
「夜ごはん?あっ、ありがとう。用意しなくて大丈夫。ちょっと部屋にお邪魔して話すだけやし」
『ちょっと…?』
「うん。今から向かうし、多分十五分程で着くなかなぁ…そしたら、また後で、じゃ、切るな」
『あっ、えっ?ええっ?…って、切れてるし…ずっと会えてなくて、久々に会えるってのにちょっとって、どないやねん』
彼の声が聞こえなくなったスマホを少し乱暴に近くにあるベッドへ放り投げた。
その後、自分もぼふんと音がする位ベッドへ勢いよく倒れ込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!