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彼のお願い
ーーーピンポーン…ピンポーン
呼出音が聞こえて、はっと目が覚める。軽く寝てしまった様で。多分彼が来たであろう、慌てて起き上がる。
モニターを見に行くとやはり彼で、応答ボタンを押してモニター越しに『はーい』と返事をして、玄関に行ってドアの鍵を開ける。
「こんばんは、カナ」
『こんばんは。ひさしぶりやね…中へ、どうぞ』
彼が履くスリッパを床に用意する。
「ありがとう。お邪魔します」
スリッパを履いて短い廊下の奥にある部屋へ向かう彼。
ドアの鍵を掛け直して彼の後を付いていく。
彼がドアを開けて先に中に入った。
「うわぁ…むっちゃ涼しい。エアコン効いててほっとするわ。」
『ほんま?よかったぁ。朝晩涼しくなったっていっても、まだまだ暑いし。暑いままでほんまに秋来るんかなぁ…』
「秋?来るやろ?お盆過ぎてから、夜になったら少しずつやけど虫鳴いてるやん。少しずつ少しずつ季節は動いてるし、安心せーーーい…って、あっ、そうや、これ、後で食べてな」
と言って、小さめのエコバックを渡してくれた。
両手で受け取って袋の取っ手を広げて中を見ると、私が好きなプリンとシュークリームが入っていた。
『わぁー、ありがとう!むっちゃ嬉しい!!先に冷蔵庫に入れてきていい?』
「もちろん!」
『ありがとう。行ってくる』
いそいそと冷蔵庫に入れに行って、代わりに冷えたお茶とコップを持って部屋に戻った。
『エコバックありがとう』
簡単に畳んだエコバックを『はい』っと彼に渡すと、「イ~エ」と軽く言って、受け取ってそのままリュックのポケットに仕舞った。
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