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真夜中、隣で眠る人はこちらに背を向けている。
背中合わせの二人をさっきまで包んでいた筈の熱は、とっくに霧散してもう跡形もなくなってしまった。
「俺はあなたの何ですか?」
喉元まで出掛かるそれは、破滅の言葉だとわかっているからいつも言えない。
一時的にでも、欲だけでも、あなたの役に立つならいいというのも紛れもなく本心だ。それだけでは足りないなんて言ったら、きっとすべてが終わってしまう。
そっとベッドを揺らさないように、俺は身体の向きを変えた。
闇の中目を凝らして、細いけれど薄っすらと筋肉の乗った背中をじっと見つめる。
視線に力があったら起こしてしまうと思った瞬間、不意にこちらを向いた彼がふわりと笑った。
いつも通りの綺麗な顔で。
──どんな関係でも、俺はやっぱりこの人が好きなんだ。
~END~
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