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「いいバイク、乗ってるね」  美しい月の光が照らす、秋の夜。そう声をかけてきた女に、見覚えがあった。時々利用している、地元の小さなライブハウス。そこのオーナーの娘だと記憶していた。 「まぁ、他に金を使うこともないから」  互いに顔見知りではあったが、話をしたのは今日が初めてだった。 「私もバイク、趣味なんだ。今度、一緒にどう?」  女はそう言うと、やにわにスマホを取り出した。その姿を、睨むような目つきで見た。 「ツーリングに行こう」  それでも女は怯むことなく、オレを誘った。どうしてこの女は、オレなんかを誘うのか。そう思いながらもスマホを取り出すと、連絡先を交換した。 「ありがとう。また連絡するから」  そこで初めて、女の名を美音(みね)だと知った。
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