第11回文学フリマ大阪参戦記

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2023年9月10日(日)    去年の反省を活かし、出店者入場時間10分前の9時50分に第11回文学フリマ大阪の会場であるOMMビルへたどり着いた俺。  そんな俺を驚かせたのは長蛇の列だった。  なんじゃこりゃ。  会場の入り口から大蛇のごとくウネウネと伸びていた列は、その体を壁に沿わせて反転し、入り口の向かい側まで伸びていた。  スタッフの方が最後尾はこっちだと看板を上げている。その看板も見ているうちに遠ざかっていく。  呆気に取られる暇も与えてくれない。俺はブース資材と本が重たい旅行鞄をガラガラ引きずりながらその最後尾へと並んだ。  今年の文学フリマは一味違う。  それは、いままで会議室ふたつ分の会場がみっつになったと聞いたときから感じていた。  出店者ブースの数も去年の約500から800に増えていた。  コロナが本格的に明けて、来場者数も爆増するということか。  それにしても。  やがて10時。出店者の入場時間になった。  しかし、  動かない。  列がちっとも進みやしない。  ひょっとして誰かがタンマスイッチを押して時間を止めたのか?  ちがう。  出店者が多すぎて、その列の、その大蛇の動きが緩慢になっているのだ。  10時10分。ようやく入場でき、自分の出店者ブースへ。  出店者として参加すること4回目。もはやブース設営はお手の物だった。  ちゃちゃっと進めるぜ、へいへい、と余裕をかましているとアナウンスが。  「来場者数がめちゃんこ多いからアーリーオープンで10時50分から開場です!」  ちょ、待てよ!  予定ではブース設営をチャッと終わらせて、オープンまで時間をお知り合い出店者への挨拶にあてようと思っていたのに!  いや、そもそも、入場に時間かかってブース設営の時間が削られているのに!  あわてて設営を完了。もう開場。  どんなにバタバタしていても開場の瞬間は格別。  カーテンが開け放たれた大窓から、川沿いの爽やかな風が見えるような青空が広がった。  出店者さんの大拍手から第11回文学フリマ大阪スタート。  ま、オープン直後は来場者の皆さん、お目当てのブースへ一直線なので、私みたいなアラフィフ凡サラリーマンハゲオヤジのブースには誰も来んわね。と呑気にしてたら私のブースの列の向こうから数人の若者が。  おお! ひょっとして去年購入してくれた方々がリピーターとなって駆けつけてくれたのか! なんて、まあわかってましたけど、左みっつ隣りのブースへ。大阪指折りのかしこ高校のブースか。その学生や後輩たちかな。  楽しそうだ。俺の学生時代、本好きは孤独と相場が決まっていたもんだが。  「じゃあ、僕たちぐるっと見てきますんで」  と散っていく若者に声をかけ、半ば強引に見本誌を読ませる。  おそらく眩しい青春に嫉んだ私の怨念のようなものが彼らを引き留めさせたのだろう。  今年は見本誌に工夫を凝らし、1ページの短編を3本ほど収録し、そこを読んでもらおうと企んでいた。  彼らがそのページに手をかけた。  いけ! 刺せ! 俺の1ページ短編小説はナイフだ。サクッと読者のハートを貫くぜ。  クスッ ハハハ  彼らが次々と笑っていく。  よっしゃ!  俺はガッツポーズをした。これは心理描写でなく、本当にガッツポーズをとりました。  「いや、おっちゃんは本を売るより読んでもらいたいんや。ほんで、笑ってもらえたらそれで満足なんや」  はあ、と若者特有の乾いた相づちをうち、また本へと戻って行く学生たち。一周して戻ってきますと会場の人ごみに紛れていった。  よっしゃ! 開始5分と待たず読ませることができた。俺は嬉しくなった。  文学フリマは強引な客引きはNGとなっているので、出店者はみな大人しい。  大体の人がブースに座って、本を手に取った人に声をかけるかどうかってところ。  だが、俺は違う。  俺は目の前を通る人みんなに声をかける。しかも立って。ずっと立ちっぱなしだ。俺のブースの列の人がみんな座ってても、俺は立って声をかけ続けるのだ。  「いかがですか?」  「見本誌読んでください」  「ちょっとでも読んでいただけると嬉しいです」  「おにいさん、コメディ気分じゃないですか?」  「1分で読める話ありますよ!」  などなど。  だって、せっかくの一期一会、できるなら来場者みんなに読んでほしいじゃん。みんなの俺の本を読んで笑ってる顔みたいじゃん。  だから俺は声をかけ続ける。見本誌会場に見本誌は置かない。目の前で読んでもらうことだけがすべて。  そこからは怒涛。  ツイッターで繋がっている方々が差しいれもって来てくださったのがすげーうれしかった。  探して、キョロキョロして近づいて来てくださる皆様のお姿、とても神々しかったです。砂漠の中で救助が来たような、とてもホッとするお姿なんですよね、皆さん。  珍しい醤油ですとか、ちょっとした手紙同封とか、わざわざビニールに小分けして持って来てくださったりとか、垣間見える心遣いがスゲー嬉しいんですよ。マジで。  本当にありがとうございます!  とかなんとか言ってたら、お昼まわったあたりでアナウンス。  なんと! 去年の来場者数をお昼の時点で超えたんだって!  そんなことある!?  たしか去年も過去最高だったのに、それを半分も待たずに超えちゃうなんて!  ひやー恐ろしや。  しかし、そこからさらに恐ろしいことに……  新刊が完売に!  いやーーーーー!  なんという失態!  もっと刷っとけばよかった。  しかしそうも言ってられん。時刻は午後3時。マッハで昼飯食べて他のブースも見ていく。去年お世話になった方、去年は客で今年は出店者になった方、ツイッター、エブリスタで繋がった方。  特にネットで繋がった方は顔を拝見するのがはじめましてでなんか嬉しい。  みんないい人。最高!  この時間がずっと続けばいいのに。  この日だけ1時間が3時間ぐらいの遅さで進めばいいのに。  なんてこと思いながら時間は16時。  またや。  撤収作業が始まった。  まだ回ってらっしゃる一般来場者さんもチラホラいるのに、  閉会は夕方5時なのに、  帰りの電車が空いてることに欲をかいて、  出会いがもったいない!  去年も言いましたけどね。  で閉会。  来場者数はなんと!  デケデケデケデケ、デンッ!  4282人! 去年の倍近く! 拍手!  いやーどおりで新刊も速攻売り切れるわけだ。  香川での開催も決まり、ますます盛況になっていく文学フリマ。  皆様も来ないなんてもったいないですよ!  で、最後に反省点  本の表紙、こんどは凝る!  山城木緑さんの本、カッコよかったなぁ。  RRRのTシャツを着た人とRRRバナシしたかった!  『濵口屋』のネームプレートを見て立ち止まった方、エブリスタで私の作品を読んだことあるとのこと。新刊残しておいて買ってもらえてたらなぁ。  万城目学先生、出店してたん!? くそ〜、本買いたかった〜!!!  以上!  第11回文学フリマ大阪、出店者の皆様、来場者の皆様、運営スタッフの皆様、本当にお疲れ様でした!  パワーもらいました!  来年も出店できるようがんばります!  バイバイ!  
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