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 職員室で図書室の鍵を借りながら、担任に杉崎さんのことを聞いてみた。 「え?ああ、杉崎のこと、誰かに聞いたんだな?」 「あ、はい。事故に遭ったって本当なんですか?」 「本当だよ。先生もびっくりしたよ」 「で、もう回復してるんですよね?」  きっと大したことなかったんだろう、あの杉崎さんの姿を見れば分かる。古賀もあんなに思い詰めることもないのに。 「……いや、みんなには休み明けに話をするつもりだけど、集中治療室でまだ意識が戻らないんだ。もう一ヶ月経つのに。昨日先生もお見舞いに行ってきたんだが、目を開ける様子はなかったよ」 「……え」 「杉崎が目を覚ますように、学校が始まったらみんなで励ましの手紙かなんかを書いてやろうかと考えていたよ。その時は協力してくれな」  ポンっと肩を叩かれて、担任が去って行った後に、やけにひんやりとした風が腕を掠めた。  僕は、ゆっくりと図書室に向かった。  鍵はいつも通り閉まっている。ドアを開けると今日も蒸し暑い空気が体にまとわりつく。  いつも開いている窓、カーテンが揺れていて、窓からの日差しと共に、杉崎さんは現れる。涼しい顔をして。  一瞬で、僕の額からは汗が滲み出て首筋を流れていく。こんなに暑いのに、暑さを感じないとか、物音もせずにそこにいるとか、そもそも鍵の開いていない図書室に先回りしていることがおかしかったんだ。  いつもと変わらない笑顔を向けてそこにいる杉崎さんに、不信感が募る。 「なんで、杉崎さんはここにいるの?」  僕の疑うような視線と質問に、びくりと肩を震わせたような気がした。 「さっき、夏休み初日に事故に遭ったって、まだ意識が戻らないって、聞いた……」  震える声の僕に、杉崎さんが苦痛な表情をした。
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