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 風のような柔らかい空気が俯いた僕の頭を撫でる。杉崎さんがそっと近づいてきて、触れているのに、その手の感触がない。 「内田くん、ありがとう。君に見つけてもらえて、よかった」  透き通る真っ白な肌に、次々と涙の筋が流れてゆく。外からの日差しに照らされて、キラキラと煌めいて見えた。思わず、伸ばした手。  だけど、その手で拭うことは叶わなかった。  雲に隠れた日差しと共に、目の前にいたはずの杉崎さんの姿が、消えてなくなっていた。  日陰になった図書室。開いた窓からの風がいつもより寂しく、冷たく感じた。  さっきまで鳴いていた蝉は、みんな死んでしまったんだろうか、外は耳鳴りがするほどに静かになった。  僕の夏が、終わった。
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