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 夏休みも終わりに差し掛かった頃、僕は学校へ来ていた。職員室で担任に挨拶をして、図書室へと向かう。  先生から渡された鍵を使って、誰もいない図書室のドアを開けた。  籠っていた熱が室内から一気に放出されて、身体中に汗を滲ませた。ひとすじの風を感じて、視線を図書室の奥へと向けた。  窓からの日差しを遮るカーテンが揺れている。  薄暗い室内に、ゆらりと揺れるカーテンの隙間から、日差しが差し込んでは隠れ、また差し込んでは隠れを繰り返していた。  窓が開いている?  そう思いながら近づくと、カーテンに手をかけた瞬間、カタンッと小さな音が聞こえた。  思わず振り返るけれど、誰もいるはずがない。窓からの風で、何かが倒れたのかもしれない。と、とくに気にもしないでカーテンを開けた。  室内が、外の世界と繋がるように明るくなった。  窓は全開に開いていた。クーラーが効いてくるまで時間がかかるだろうし、とりあえず開けておこうかな。カーテンをまとめてから留めると、外の空気を胸に吸い込んで、振り返った。  ガタンッ!!  驚きすぎた弾みで、僕は窓際の本棚に手を滑らせて、思い切り腰を抜かしてしまった。  いつの間にそこにいたのか、透明感がありすぎる彼女の姿に、心臓が尋常じゃないくらいにドクンドクンと波打つ。
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