銀髪の魔女は黄昏に沈む

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「終わった?」   まるで海底から一気に引っ張り上げられたように、意識が戻って来た。 「うん……」   言いようのない疲労感がのしかかるようだ。 血管に鉛でも流し込まれたとでも表現するのが良いのかもしれない。 重い。頭も、身体も、心も、全てが重い。 「スイカ?」 「どうぞ。嫌いじゃないなら、食べて」   三角に切られたスイカの頂点をかじる。 そんな私を見てから、隣に座る美琴も自分のスイカをかじった。  カナカナカナ…… 「ここって、もしかして、天国?」 「違う」 青いスカートから伸びる細い美琴の足は、今にも透けそうなほどに白い。 空は、紫と柿色が水彩絵の具のように滲み合っていた。 「でも、どっちでも無い場所。誰でも来られる場所じゃない」 美琴は「帰りたい?」と庭の隅に並ぶ彼岸花を見つめながら訊ねた。 「ここにいても良いの?」   私の声のトーンが僅かに上がった。 帰りたくない。ここは私にとってのクラリスの居場所みたいなものなのかも。 そうなら、ずっとここにいたい。 美琴は黙ったまま頷く。 「じゃあ、私ずっとここにいる」
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