銀髪の魔女は黄昏に沈む

14/15
14人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
商店街は相変わらずひと気が無かった。 がらんと、人間だけが消え去ったような風景。 でも、なぜか生活感が残る町。 遠景に浮かぶ山の稜線は、燃えるような茜色で縁どられていた。   総菜屋の商店街の前で立ち止まると同時に、足元が光に包まれた。 タンポポの綿毛のような光の粒子が、夕空に舞い上がり、私の身体をも包み込む。    帰ったら……美和さんと、ちゃんと話してみようか。 もう後悔したくない。 当たり前にいると思っていた母が、ある日突然いなくなってしまったように。 学校も終わりがないわけじゃない。 あと半年。卒業までのカウントダウンでもしてみたら良いだろうか。 紗和ちゃんと、美和さんと、お父さんと。少しでも話せたら、笑えるようになれたら。 学校を自分の居場所にする必要なんてない。 そう思えたら、朝を迎える辛さも、少しは紛れるだろうか。   わからない。けれど、もしかしたらこの先に、いつか本当に心から笑える時が来るかもしれない。 人生の長い旅のどこかで、本当の幸せを見つけられるかもしれない。 「美琴ちゃん?」 白い光が視界の半分を覆い始めた時。 商店街の奥の電信柱の隣に立つ、銀髪の少女が見えた。  カナカナカナ……   踵を返した少女の青いワンピースの裾がふわりと膨らんで、商店街の奥へと歩いていく。 夏の終わりの、切ない黄金色に溶けるように。   視界が白に埋め尽くされる間際、耳元で囁く、風鈴の音の声が聞こえた気がした。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!