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教室に着くと、案の定だった。
友達の小森 真由が、くるみとその取り巻きに囲まれている。
夜子が音を立てて引き戸を開けたとたん、
くるみはサッと顔色を変えて真由から離れた。
さんざん嫌がらせしてくるくせに、
夜子と直接やりあう度胸はないらしい。
取り巻きを引き連れて、逃げるように教室を出ていく。
「真由、だいじょうぶ? くるみに何をされたの」
「よ、夜子ちゃん……夜子ちゃん……」
騒然としているほかのクラスメイトたちには見向きもせず、
夜子は真由に駆け寄った。かわいそうに、泣いている。
ふっくらした色白の真由は、気が弱いが、優しい子だ。
クールでツンデレの気がある夜子にも、めげずに接してくれる。
大事な友達を泣かされて、夜子はさすがに頭にきた。
「なんなの、あいつ。今日という今日は許さない」
奮い立つ夜子に、真由は手で顔を覆ったまま首を振った。
「いいの、夜子ちゃん。もう、怒らないで……」
「なんでよ!」
「夜子ちゃんが居てくれるなら、わたし、それだけでいいよ……」
健気な真由に、夜子はそれ以上なにも言えなかった。
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