1 電車

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 笑顔を作るのが苦手で、周囲からはつめたく思われやすい夜子だが、  意外と熱血な一面がある。  数少ない友達だって準備には来るのだから、なるべく参加したい。 (とか言いつつ、今日もギリギリの電車だけど……)  日頃の低血圧が祟り、今日はまだ何も口にしていない。 (倒れる前に、どっかコンビニでも寄って、食べるもの買おうかな)  そう考えたとき、思い出したのがアメのことだった。  座席に座っていた夜子は、膝のスクールバッグをごそごそと探る。  だが、発見するよりさきに、高校の最寄り駅に電車が着いてしまう。  夜子は慌てて席を立つ。  乗り込んできた男の子と、勢いあまってぶつかりかけた。  ヒヤッとしたが、男の子は空いた席を見つけたことのほうが嬉しかったようだ。  いかにものんきな笑い声に、夜子は思わずクスッと笑ってしまった。
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