1人が本棚に入れています
本棚に追加
高校は違うが、夜子は彼をよく知っていた。
模試の成績で順位を抜かれたからだ。
それも、一番の得意科目である国語で。
二年生になってから入ってきたというのに、永井の活躍は目覚ましかった。
ガリ勉かと思いきや、高校の弓道部では全国大会に出場したらしい。
芝生のように短いスポーツ刈りが、いかにも爽やかなイケメンだ。
おまけに天輪寺という、観光スポットで有名な寺の一人息子。
文武両道、容姿端麗。しかも金持ち。
『清純』なんて名前が失笑を買わないのも、人徳あってこそだろう。
対して、『夜子』なんて明るさのかけらもない名前の自分。
ソリが合うわけないと日頃から思っていたが、
その夜の出来事は決定的だった。
最初のコメントを投稿しよう!