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(……ちょっと、言い過ぎたかな)
雷に打たれたように固まってしまった永井を前に、
夜子は少し不安になった。
ベビーフェイスとはいえ、永井も男子だ。
逆上して殴りかかってきたら、夜子はひとたまりもない。
だが、杞憂だったらしい。永井はバッと姿勢を正して頭を下げた。
「ごめん!」
弓道部員である彼の美しい一礼に、夜子はドキッとした。
永井は言った。
「野々宮さんが大きな声出すところを初めて見たから、なんだかテンションが上がっちゃって……。本当にごめん。ケガなかった?」
「いえ、別に。だいじょうぶだけど……」
夜子はこんなに素直に謝れる男子を、生まれて初めて見た。
天が二物も三物も与えた永井は、性格までいいらしい。
「オレ、調子に乗りやすいからさ。野々宮さんがはっきり怒ってくれて助かったよ。ありがとう」
感謝までされてしまうと、夜子はどんな顔をしたものかわからなくなってしまった。
「ふ、ふん。別に、あんたのために怒ったわけじゃないし」
つい、ツンデレじみたセリフまで吐いてしまう。
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