2 永井むかつく

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(……ちょっと、言い過ぎたかな)  雷に打たれたように固まってしまった永井を前に、  夜子は少し不安になった。  ベビーフェイスとはいえ、永井も男子だ。  逆上して殴りかかってきたら、夜子はひとたまりもない。  だが、杞憂だったらしい。永井はバッと姿勢を正して頭を下げた。 「ごめん!」  弓道部員である彼の美しい一礼に、夜子はドキッとした。  永井は言った。 「野々宮さんが大きな声出すところを初めて見たから、なんだかテンションが上がっちゃって……。本当にごめん。ケガなかった?」 「いえ、別に。だいじょうぶだけど……」  夜子はこんなに素直に謝れる男子を、生まれて初めて見た。  天が二物も三物も与えた永井は、性格までいいらしい。 「オレ、調子に乗りやすいからさ。野々宮さんがはっきり怒ってくれて助かったよ。ありがとう」  感謝までされてしまうと、夜子はどんな顔をしたものかわからなくなってしまった。 「ふ、ふん。別に、あんたのために怒ったわけじゃないし」  つい、ツンデレじみたセリフまで吐いてしまう。
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