2 永井むかつく

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「……別にいいよ。私、もう帰るから」 「えっ。待ってくれよ」  夜子はカンと自転車のスタンドを蹴って、その場を離れようとする。  そんな夜子の肘を、永井が掴んだ。 「なんかお詫びに……ああ、今、これしか持ってないや」  たかが肘でも、男子に触られるなんて、何年ぶりかわからない。  そのうえ、スルリと手のひらに何かを握りこまされる。 「改めてちゃんとお詫びするから。なにがいいか考えておいてくれよな」  永井は金持ちのお坊ちゃんらしく、軽く胸を張って言った。  夜子の思考が追いつく前に、永井は自転車にまたがっていた。 「じゃ、まったなー!」  白い歯を見せて笑うと、流れ星もかくやという勢いで去って行く。  その場に取り残された夜子は、はっとして手を開いた。  渡されたのは、明るいオレンジ色のキャンディだった。
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